高性能宇宙航行バス

スパイラル軌道上昇

DESTINYはイプシロンロケットにより長楕円軌道に投入されたのちに,まず月との会合を目指します.この時DESTINYは自力で高度を上げる必要があり,イオンエンジンを使うDESTINYはスパイラル軌道上昇という手法を使うことになります.このスパイラル軌道上昇を考えるためには,従来に比べて極めて複雑で難解な軌道設計・運用を行わなければなりません.そのために日陰帯時間,放射線帯通過時間,燃料消費の同時最適化やスパイラル上昇に適した長期間の数値シミュレーション手法の開発などを行いその機能・性能を評価します.これにより,重力天体周回軌道投入ミッションや全電化静止衛星での使用が見込まれます.


スパイラル軌道上昇

大型イオンエンジンμ20

DESTINYは自らの軌道制御により月やラグランジュ点に向かう軌道に到達します.この軌道変換を実現するために,従来より大出力のエンジンを使う必要があります.DESTINYはISASにて開発中の大型イオンエンジンµ20を使用し,その機能・性能を評価します.このイオンエンジンは小惑星探査機はやぶさで使用されたµ10の約4倍の推力を有しており,イオンエンジンを必要とする大型探査(太陽極域探査機SOLAR-D,小惑星探査機はやぶさMk2)での使用が見込まれています.


μ10およびμ20の性能

薄膜軽量太陽電池パネル

大型イオンエンジンμ20を運転するためには大電力を要します.この大電力を得るためには数多くの太陽電池パネルが必要となり,その結果として重量増加をもたらすといった大きな問題点があります.この大電力を軽量で実現するためにJAXA研究開発本部にて開発中の軽量薄膜太陽電池パネルを搭載しその機能・性能を評価します.この軽量薄膜太陽電池パネルは従来品に比べて約2倍の出力重量比が見込まれており,電源系の質量を大幅に減らすことが期待できる.外惑星探査(木星探査機JMO,火星探査機MELOS)や大型イオンエンジンを要する探査での使用が見込まれます.


薄膜軽量太陽電池パネル

先進的熱制御デバイス

大型イオンエンジンμ20は運転時に500W以上の膨大な熱を発生させます.限られた放熱面積,軌道制御のために変動する太陽熱入力方向という厳しい条件下での排熱を実現するために,ループヒートパイプを使用する先端的熱制御系を構成してその機能・性能を評価します.これにより,ミッション期間中の外部熱環境が大きく変化する深宇宙探査や,大発熱機器のオン・オフ等により内部発熱量が大きく変化するミッションでの使用が見込まれます.

標準バスの小型・高性能化

小型機による深宇宙ミッションを実現するDESTINYは,可能な限りミッション機器に重量や消費電力を充てる必要があります.標準バスシステムの質量・消費電力を削減し,ミッションペイロード比率の向上やミッション遂行能力の向上等を実現するために,JAXA研究開発本部にて「戦略コンポーネント」として開発してきた高性能機器を採用・搭載し,その機能・性能を評価します.将来の深宇宙探査ミッションにおいて幅広い使用が見込まれます.