DESTINY+ミッションの概要
打ち上げ~地球圏離脱
DESTINY+はイプシロンロケットで地球周回の長楕円軌道(軌道高度230km × 40,000 km, 軌道傾斜角30deg.【検討中】)に投入されます。初期チェックアウトを終えた後、イオンエンジンを噴射して探査機を加速させ、徐々に軌道高度を上げる「スパイラル軌道上昇」を、2年程度かけて行います。遠地点高度が月の重力圏(高度約30万 km)に達すると、約半年に渡って「月スイングバイ」を実施し、地球圏を離脱します。

Phaethon遷移軌道
地球圏を離脱した後、探査機は約2年にわたりイオンエンジンを噴射して徐々に軌道を変更し、小天体Phaethonとの会合地点を目指します。Phaethonが太陽を公転する軌道は、近日点距離0.14 AU、遠日点距離2.4 AUの長楕円で、水星の内側から地球の公転軌道を横切り、火星の外側にまで至ります。
この間、探査機はダストアナライザを用いて、星間ダストや惑星間ダストの観測を行います。

Phaethonフライバイ観測
Phaethonと地球の公転軌道は大きく異なるため、はやぶさがイトカワをランデブー探査したように、近くにとどまることはできません。DESTINY+は相対速度約30 km/sでPhaethonから約500 km離れた地点をフライバイし、その間にカメラによる表面の撮像と、ダストアナライザによるダストの分析を行います。

DESTINY+の先にあるもの
DESTINY+ミッションの概要は上に述べたとおりですが、DESTINYの構想は、さらにその先にある小型・高頻度な太陽系探査の実現を見据えています。
平成25年1月25日、宇宙開発戦略本部において決定された宇宙基本計画で、「宇宙科学・宇宙探査は、ISASを中心とし各研究機関が連携した体制を活用し、一定規模の資金を確保して世界最先端の成果を目指す」とされました。これを受けて、ISASを中心とする学術コミュニティは「宇宙科学・探査ロードマップ」の検討を進め、平成25年9月19日に宇宙科学・探査部会で了承されました。
宇宙科学・探査ロードマップは、小型・高頻度な宇宙科学ミッションについて、次のように述べています。
- イプシロン高度化等を活用した低コスト・高頻度な宇宙科学ミッションを実現するべく、衛星探査機の小型化・高度化技術などの工学研究課題に取り組む。
- 太陽系探査科学分野は、最初の約10年を機動性の高い小型ミッションによる工学課題克服・技術獲得と先鋭化したミッション目的を立て、10年後以降の大型ミッションによる本格探査に備える。
DESTINYは、まさにこうした要請に応える「深宇宙探査プラットフォーム」を目指しています。すなわち、
- イプシロンロケットや大型衛星の相乗り機会を活用し、打ち上げ費用を抑える。
- 電気推進と高度な軌道計画を併用し、地球周回軌道から自力で深宇宙に至る。
といった特徴を持ち、様々なミッションペイロードを深宇宙に輸送可能な探査機バスを実現します。